ソフトテニス

人生初めての部活動スタートで兄貴が嫌いになった話

小学生の頃、習い事?で習字をしており、スポーツは剣道を小学3年から6年生までやった。今考えると剣道の防具や竹刀は結構高く、お金がかかるスポーツのひとつかもしれない。

そんな思いもあったのかは定かではないが、早々と辞める訳にはいかなかった。剣道の道場が自宅から自転車で5分ぐらいの所だったので、比較的通いやすかった。

ただ練習は夏場は暑く、防具はひどく臭うし、逆に冬は寒くてあまりいい思い出は無い。
試合にも定期的には出ていたが成績は泣かず飛ばずだった。

それでもあまりお休みもせずに地道に通ったおかげでか、6年生の辞める直前には同年代で道場で一番強かった子にも互角の勝負が出来るくらいには成長していた。

武道系は意外と自分には合うのかも・・・とちょっとだけ調子に乗った。(笑

そうこうしているといよいよ小学校を卒業して中学生に進学する準備になるのだが、家族との話の中で「部活なにするの?」と聞かれた。

自分なりの思いでは、マイナーだが面白そうだった「ハンドボール」、今のような人気はなかったが「サッカー」、ちょっとうまくなっていた「剣道」などが選択肢になっていたが、家族の前では、

「う〜ん、考え中・・・」

とお茶を濁していた。

その日の夜、ご飯を食べてゆっくりとしていると、珍しく3歳上の兄から声を掛けられた。

「お前部活マジで何に入るの?」

えっ、兄貴は俺の部活が気になるのか?と不思議に思っていたが、そう仲悪くはなかったので、素直にさっき有耶無耶にしていた自分の希望を言った。

「ハンドボールかサッカー部、あと剣道部?この中から選ぼうかなと・・・」

すると・・・

「えっ、本気で言ってんの?それ全部めちゃくくちゃ練習厳しくてお前大変だぞ!それに上下関係もすげえみたいだし・・・」

「げっ、そうなの?」

その時兄貴は中学2年生。現役の先輩が言うのだから間違いないのかもしれん。

「お前さ、俺と一緒の軟式テニス部に入れよ。」

兄貴からの意外な誘いに驚いた。

そう兄貴は小学生の時は野球やソフトボールですげぇうまくて、しかも足が早くてスポーツ万能選手だったけど、中学生になってから何故か軟式テニス部に入部していた。

今現在、正式は競技名は「ソフトテニス」、昭和の時代は「軟式テニス」だった。

普通、兄弟が同じ部活するのって毛嫌いする人もいるし、どんな心境?と思いながら、ただの弟思いの兄の親切心であるとその時は思っていた。

家族にそう言わると、今までまったく興味のなかったソフトテニス(以降これで通す)が気になり出し、テニスやってるお兄ちゃんちょっと格好いいとさえ思うようになった。

もうその時にはテニス部に入部する気マンマンだったのかもしれない。

かくして中学への入学も始まり、部活への登録をするのだが、他の部活動に目移りする事なくソフトテニス部に入部した。

まあまあ仲の良い友達も一緒に入部してくれたもの大きかったし、嬉しかった。

入部届けてを出したその夜、兄貴が俺に話かけてきた。

「入部したんだってな、一緒に頑張ろうな。ところでさ、お前ラケットどうすんの?いるだろ?」

「あっ、だよね・・・全然考えてなかった。お母さんに相談するわ。」

そうそう、ソフトテニス部の部活動にはラケットが唯一必要、これはばっかりは自前で準備しなければならなかった。

新しいラケットを買う事になりそうなので、ちょっとテンション上がっていた。

兄貴が続ける。

「いや、実はさ、ちょっとしか使ってない新品に近いラケット俺もってるんだけどいる?」

「えっいいの?」

優しい兄からの入部のプレゼントかと内心喜んでいると、次の一言で全てを悟った。

「うん、全然いいよ、4000円ね♪」

(;゚Д゚)!

色が気に入らなかったらしいそのラケットをなんとかしたい一心だったのか・・・
入学祝いで少しだけ余裕のあった弟をターゲットにした悪質な計画だったようだ。

人生はじめての部活、ソフトテニスのスタートは水色のカワサキ、「New Number One」が相棒となった。

一気にテンションはダダ下がりだが、部活は入学の一連の行事が終わるともれなく始まった。

その頃からか、兄貴とは少しだけ以前の仲良さは薄れていった。

人は真実を知るとちょっとだけ人間不信になる。ましてやそれが家族だと尚更だ。